埼玉県川口市の相談しやすい税理士、大内です。
今回は、遺言と異なる遺産分割について、考えてみたいと思います。
遺言と異なる遺産分割はできるか
被相続人が遺言書を遺した場合、原則としては、その遺言の内容通りに遺産分割しなければなりません。しかし、遺言の内容通りに遺産分割すると、相続人に不利益となる場合があります。このような場合には、遺言と異なる遺産分割をすることができます。
ただし、遺言と異なる遺産分割をするためには、下記①~④の条件を満たす必要があります。
①遺言書の内容を知った上で相続人全員がこの内容と異なる遺産分割に同意していること
②相続人以外に受遺者がいる場合は、その受遺者全員が同意していること
③遺言書に遺産分割協議を禁止する文言がないこと
④遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意があること
相続人でない受遺者がいる場合
相続人ではない方が、遺言により被相続人の遺産を受け継ぐこと(遺贈)がありますが、この場合には遺言と異なる遺産分割を行うにあたり、注意が必要です。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈がありますが、それぞれの場合で、手続きが異なります。
遺言で遺贈する割合のみを指定する包括遺贈の場合、受遺者に遺贈の放棄をしてもらわなければなりません。包括遺贈の放棄は、相続放棄と同様に家庭裁判所への申し立てが必要となります。
遺言で特定の遺産を指定する特定遺贈の場合、受遺者に遺贈を放棄する旨の意思表示をしてもらうだけで構いません。特定遺贈を放棄する意思表示は当事者間で行えばよく、家庭裁判所への申し立ては必要ありません。
最後に
遺言と異なる遺産分割が完了したら、遺産分割協議書を必ず作成しておかなければなりません。そして、その遺産分割協議書には、相続人、受遺者、遺言執行者の全員が遺言の内容を確認し、遺言とは異なる遺産分割をすることに同意している旨を記載する必要があります。
被相続人の方のさまざまな想いで作成された遺言も、その後の状況により、相続人の方々にとって、不都合な内容となってしまうことはあるでしょう。そのようなときは、やむをえず遺言と異なる遺産分割を検討することも必要かと思います。